風を受け、波に切り込む、ウィンドサーフィン(神奈川県津久井浜) 

神奈川県横須賀市にある津久井浜で開かれたウィンドサーフィンレース「ザ・マスターズ 2015 in 津久井浜」を観戦してきました。

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映画『Life 天国で君に逢えたら』の主題歌として耳目を集めた桑田佳祐氏の「風の詩を聴かせて」という歌を耳にする時、私はまずその湿り気を帯びた歌詞に心を奪われる。

夏の日よ Love you forever.
儚きは陽炎
波に舞い 帆揺れてた
人はもう亡い

いつの日か Till we’re together.
面影に戸惑う
太陽と戯れた季節は終わる

海なる風に抱かれ
口ずさむメロディ
やがて When I die.

雲の上で口づけして
あの日のまま笑顔でいて
風の詩をまた聴かせて

(中略)

これほど人の死を直截的に表現した詩もまた珍しいと思うが、海辺の情景とメローなメロディーも相成って、映画の原作者である飯島夏樹氏に好まれ、またそのことが彼の生涯唯一の映画作品の主題歌になった理由でもある。

38年目の夏を迎えることができなかった一人のウィンドサーファーは、いったいこの歌にどのような想いを重ね合わせていたのだろうか。

飯島夏樹。昭和41年8月19日生まれ。
プロのウィンドサーファーとして活躍し、日本人として唯一、8年連続でワールドカップに出場した。
琉球大学在籍中にウィンドサーフィンと出会い、やがて大学を中退後プロとしてハワイに移住。
ワールドカップのみならず日本国内外の数々の大会で華やかな戦歴を残す。

しかし、平成14年6月に肝細胞癌が発覚。二度に渡る手術の甲斐もなく、平成17年2月28日、家族に見守られながら星の人となる。
享年38歳。

彼が残していった『Life 天国で君に逢えたら』という作品は、飯島氏自身を投影したストーリーで構成される。
スポーツマンとしてのはち切れんばかりの身体能力からはまるで想像もできない宿命的な死の影が、やがて主人公の肉体をむしばみ、好きなウィンドサーフィンが出来なくなるかもしれないという絶望的な精神状態で苦悩する彼を中心として、後に芽生える家族の絆やひたむきな闘病生活を描いた感動作である。

 

まさに“風に乗るセイリング”と表現すべき映画の1シーンを思い出しながら江ノ島電鉄に乗っていると、気が付けば「ザ・マスターズ 2015」が開かれる津久井浜に到着した。

この日は海よりの風がやや強く、全国から集まったアマチュア選手たちを半ば挑発し、また歓迎しているようだった。

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神奈川県津久井浜の海岸。横須賀市街地が見える。

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この日は快晴。抜けるような青空が気持ち良い。

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色とりどりのセイル(帆)が並ぶ。これから始まるレースを前にして羽を休める蝶のようだ。

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いかにも速度の出そうなボード。
歴史的な理由からロングボードとショートボードでは国際大会でも別々のカテゴリとして扱われているという。

この日初めてお会いした実行委員の岩崎勝郎さん。
https://www.facebook.com/katsuro.iwasaki

プロのウィンドサーファーとして数々の大会に出場されながら、ウィンドサーフィンの面白さを世に伝えるために、こうした大会イベントなどを精力的に取り組まれているようです。
驚いたことに、地元が筆者と同じ南九州のしかもご近所ということだから、世の中広いようでいて実は存外狭いのかもしれない。

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レースを前に協議事項を伝える岩崎さん。
何よりも安全第一と力説する。

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本レースは「オトナウィンドウ」がコンセプトで年齢層も高め。
女性の参加者も比較的多く見受けられる。

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この日絶好のウィンドサーフィン日和ともあって、同じ浜辺でレッスンを行う初心者の方の姿も見られた。

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レースを前に競技ルールを確認し合うマスタークラスの選手の皆さん。
その内の上位数名がレジェンドクラスのレースに進めるとのこと。

1980年代にはウィンドサーフィンも黄金期を迎え、鎌倉海岸をメーンに日本各地で流行ったものだが、ヨットとサーフィンを足して2で割ったような構造をうまく扱えれば、風の力を借りて波の斜面を滑走し意外な速度を楽しむことができる。

そのためには①ボード部、②リグ部(セイルやマストなど)、③装具(リグを引き込むためのウェイトジャケットやスーツなど)の3つを事前に準備する必要がある。

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この日は一人2つのセイルを用意し、レースに備える。

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これだけ多くの道具が並ぶわけだから通りからも目立ち、徐々に通りすがりの観客も増え始める。

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準備が整い、順に沖に出る選手たち。

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鋭角に体を傾けてバランスを取る選手。

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同じ風を同時に受けるとまるで蝶が群れをなして海面を飛ぶようだ。
青い旗はスタート合図を出すためのもの。

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途中バランスを崩して沈(ちん)してもすぐに立て直す。

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風と波を巧みに操ることで時速25kmほど出せば、セイルに発生する揚力と重力により波の斜面を滑り降りる具合になる。

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沖合に向かう選手。まるで映画の1シーンを思い出す。

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風が出始め、激しくドライブをかける選手。
大胆にも波の合間を切り刻むような速力を出す。

午後になるといよいよ風も本格的に吹き始め、選手たちの動きにも躍動感が増してくる。

幅広い年齢層の選手たちであるが、ずいぶん年配の方と思える選手も一度波に乗れば瞬く間に海の猛者となる。

その力強さ、バランス感覚には目を見張るものがあった。

ウィンドサーフィンは風を読む完成と舟を巧みに舵取るテクニックが何よりも要求されるが、
それは逆に言えば肉体的な差異までも世代と共に乗り越えた、年齢の垣根のない自由な競技とも言えるだろう。

 

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この記事を書いてからそれほど日を置くこともなく、今度は筆者が自らウィンドサーフィンを体験することになった。

まさかこの不器用な自分にそんな離れ業ができるなどとは当初はまるで自信もなかったが、そこは津久井浜にある有名店「TEARS」さんの協力の元、ストリームトレイルの大人バンザイ教室「BEACH INTERNATIONAL SCHOOL」の企画で現実のものとなったのである。

恥ずかしながら、まあ、それなりに必死ではあるけれども、十分に楽しめた拙筆は以下からご覧頂けます。

ひとつだけ確かなことは、道具とインストラクターがいればこの競技、初日から意外や意外、かなりの沖合にも出られるということである。

(まあ、その前にわりと海水のドボンとするんだけどね、つまり濡れます。)

そのまま流れ去ってしまわないように、初心者の方はまずは近くのウィンドショップへお問い合わせされることをオススメします。

 

大人の遊びバンザイ教室
BEACH INTERNATIONAL SCHOOL
info@streamtrail.tokyo
bis.streamtrail.tokyo