ST OUTFITTERS 特別サーフレッスン BY 北村プロ

早朝4時、プロ ロングボーダーの北村氏と一緒に都会を抜け出して海へ向かう。
ひょんな事から人生で初めてのサーフィンをプロというフィールドで活躍している北村氏から教わる事になった。

車内の会話は少し非日常的だった。サーフィンの面白さや波との駆け引き、各地へトリップした際の楽しみ…。
大人になってから遊びを教わる、という事は社会・日常生活とは少し逸脱した感覚だ。
夜明け前の高速を走る雰囲気がよりいっそう非日常感を出していたのかもしれない。
まだこの時点では身体の動かし方や波の上で動くボードに乗る、といった事は想像もできなかった。
ただ、こんなに楽しそうにサーフィンの良さを教えてくれる北村氏が羨ましいと感じた。

「到着しましたよ!」
季節は9月とはいえ、少し肌寒く海に遊びに来ている人はいなかった。
ウェットスーツを着込んだ数人がすでに沖に出て波待ちをしていたり
滑らかに波に乗り、楽しんでいる。

はやる気持ちはあったが私は初心者で、基本すらも出来ていないのだ。
ウェットスーツに着替え、浜辺へ下りる。
これはなんて窮屈なんだ、これを着てはたして不安定なボードの上に乗る事ができるのか??

まず行ったのは陸上で「ボードに乗るイメージ作り」からだった。
浜辺に書いたボード上でパドリング(漕ぐ)の練習。
これはクロールとは違い、水をしっかりと漕ぐ練習だ。
次に崩れる波に追いつき、タイミングを計りボードに乗る、砂のボードの上に身体を起こしボードに乗るイメージトレーニング…。
この一連の動作練習を身体が覚えるまでやる。
キツイ…!北村先生はなかなかOKをだしてくれない。

「一通りイメージ出来たら、海に入りましょう!」
北村氏は胸の辺りまでの深さ、緩やかな波が発生する場所へ移動し
そこまで私はパドリングで向かう。

「良い波が来たら押しますのでパドリングしてさっきのイメージでボードに乗って下さい」
「大丈夫。力を入れすぎないで、波の上を滑るボードにリラックスして乗る感覚ですよ」

ここまでは覚えているのだが、いざ波が来て北村氏に押して貰った後、
パドリングとは言いがたい手をまわし後は気が付くと水中にいた。

何回もやった。段々とパドリングする両肩、腕が重くなくなるだけで、なかなかイメージ通りにはいかない。
女性の人も高齢の方も、各々波を楽しんでいるのを横目に見て自分はドボンドボンと水中にいるのだ。

「身体に力が入りすぎですよ、波に乗せてもらう感覚です。力でどうにかコントロールしようとしたら乗れないですよ」
北村氏はリラックスした表情で教えてくれた。

少し意識を変え、何も考えず押される波の上に自分が少し乗る感覚。
遠く後方から聞こえる「今だ!!!」の声が聞こえていたようないないような状況で
繰り返したイメージトレーニングの動作をした。

するとどうだ。 立てた…。
ボードにへばりついて見ている高さが海抜0cmとは違う。
突然周りの風景が良く見える。
後ろから聞こえる歓声。文字には出来ない感覚だった。

波が押すエネルギーに身を任せ、滑るボードの上でただバランスを取るだけだったが、確かに乗った。
滑る感覚は何とも言い難い。。周りの大人がサーフィンは面白いぞと言ってたことがなんとなくわかったような…。

「やったじゃないですか!!乗ってましたよ!」と先生は笑顔で教えてくれた。
乗れたのではなく、乗せてもらった感覚なのだがこれがヒントである事は間違いは無いだろう。
サーフィンを行う事がどんな影響を人生に与えるかはわからないが
自然の中で、最低限度のアイテムだけで遊ぶ。
本当にシンプルだ。

北村氏がぽつりと言っていた。
「サーフィンはただ、波に乗るだけでなく海で波を待っている間、色んな事を考えたりする。陸から離れて見るその景観や景色だって面白いんだ。そして一つとして同じ波は来ないしね。」

レッスンでは私より先に乗れた50歳代の方も参加しており、初めて乗れた喜びを分かち合う事ができた。
陸上でのイメージトレーニングを行って次のステップを目指そうと思う。