西表島の動植物図鑑の製作〜撮影の裏舞台

西表島在住ネイチャーフォトグラファーの堀井大輝です。
前回のコラムでサラッと最後に書きました、西表島の動植物図鑑の製作、撮影の裏舞台を今回はご紹介したいと思います。

西表島にはたくさんの動植物が暮らしていますが、生息環境は海の中から、マングローブ林、ジャングルの奥地、果ては洞窟と様々で、撮影対象を絞ったら様々なエリアに分け入って撮影をしていきます。

今回はその中でも思い出深い撮影についてご紹介します。
西表島は年間を通して温暖で、降水量が多い典型的な亜熱帯海洋性気候の島です。

年間平均湿度は80%で、夏場のジャングルなどは蒸し風呂状態。撮影時は汗が滝のごとく流れます。

夏の終わりの夜のジャングルでヤエヤママルバネクワガタを探して深夜までオオムカデやハブをかき分け山中を探索したり、世界でも西表島と石垣島の限られた渓流にのみ生息するコガタハナサキガエルを探し求め、彼らの繁殖期に深いジャングルの渓流を探索したりと、生き物撮影はシーズンやタイミングとの勝負です。

ジャングルの宝石ヤエヤママルバネクワガタ

コガタハナサキガエル

2019年、西表島の洞窟性の小型コウモリ類の生息地である洞窟での撮影は、中でも指折りの体験となりました。

洞窟の入り口は人間1人が這いつくばってギリギリ通れるような高さしかなく、その下は7~8m程地下へと落ちています。ここをロープを使い降りて行くわけですがこの不安定な体勢から、下が見えない未知の世界へと降りる際、ドキドキとワクワクが半分ずつ心臓の鼓動を上げていきます。

洞窟内は数部屋に分かれていますが、コウモリが休む部屋は天井が傾斜しており徐々に狭くなっています。また、地面はバット・グアノ(長い年月を掛けてコウモリの糞や屍骸が堆肥化したもの)が堆積しており、歩くと膝下の深さまでズブズブと足が入っていきます。

そんな道のりの先には無数のカグラコウモリが休んでおり、夢中でシャッターを切りました。
カグラコウモリは、八重山諸島の固有種で唯一国内に暮らすカグラコウモリ科のコウモリです。

カグラコウモリ

32GBのSDカードがいっぱいになった頃、何とも言えない達成感と幸福感に包まれました。

無事に、目的の小型コウモリ3種類の撮影に成功し図鑑の哺乳類ページには西表島のコウモリ類4種類(ヤエヤマオオコウモリを含む)の写真を並べることができたのでした。

撮影したものの中から図鑑掲載種は現在640種程を予定しています。説明文章を書き連ね、目下作成中です。お楽しみに!