新緑の北海道!ベストシーズンぶらり紀行(小樽篇)

向かうは、札幌から西へおよそ40km、北の漁港都市「小樽」。
この日は車はセーブして、きままに移動しようとJR函館本線に身を預けていると、道のりの半分ほどを過た頃に右手に日本海が見えてきた。
太平洋の明るさとは打って変わって、茫洋とした海が広がっている。
同じ海なのに、なぜこんなにも受ける感じが違うのだろう。
これから新しい北海道に出会うワクワク感とともに、焦燥感のようなドキドキを胸に、小樽へ想いを馳せる。

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初めて目にする日本海。あいにくこの日は曇り気味。
ねずみ色の海の向こうに、小樽の港が姿を現す。

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懐かしい感じのする時計がホームで旅人を迎える。

小樽駅に到着すると、ローカル風情漂うどこか懐かしい風景が筆者を迎えてくれた。
地元の方らしい人々の話し声が耳に入ってきて、ここは小樽なんだという実感を得る。

「天気予報だと雨だったけど、曇りになってよかったしょ。」
「そうだねえ、今日はこれからチッコウへ行ってくるからさあ。」
「なんだ、買い物かい?」
「そうだよお、イオンに行ってくるよ」

北海道の人が話す言葉は活字で書けばこそ標準語とそう変わらないが、いくらか間延びしたようなイントネーションが独特だなと思うことがある。
小樽は、札幌とはまた違う男っぷりを感じさせるイキのいい語り口をする人もいて、海辺の町らしさを感じさせる。
「チッコウ」とはおそらく小樽築港という隣駅のことで、最近では「ウイングベイ小樽」といった大型アウトレットモールも造られ、
この北国の港町であっても商業資本の触手が伸びており。町の人たちの生活様式もこの10年でだいぶ様変わりしたとも聞く。

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改札を抜け、大通りを下っていくと鉄道ファンにはたまらないであろう光景に出会った。
手宮線跡地だ。

手宮線とは北海道で最初にできた鉄道らしく、今は廃線となっている。
写真の奥のほうで線路が途切れているのがわかるだろうか。
脇には遊歩道があり、線路をのんびりと歩く街のひとたちと何人かすれ違った。
なんだか不思議な光景である。
ここだけ廃線となった昭和60年のまま、時間が止まっているような錯覚を覚えた。

 

まずは腹ごしらえをしよう。小樽と言えば、魚貝を食べずに帰れない。
一番の目当てであった、本御所の“ほっけ定食”をいただくことにする。

それにしても厨房がにぎやかだ。皆地元のパートのおばちゃん達なんだろう。楽しそうだな。

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まだかまだかと心待ちにしていると、厨房からおばちゃんがやってきて、なんだか申し訳なさそうに腰をかがめてトコトコとこちらに歩いてくる。

「お客さぁん、すいません。おしゃべりしていたらさ、ほらさ、ほっけ焼きすぎてしまって焦がしてしまってさぁ。
もう一度焼きますんで、もう少々お待ちいただけますかねえ。」

すまなそうに頭を下げてくれたのだが、なんだか空腹で怒るどころか笑いがこみ上げてきてしまった。

さて、それから5分ほどしてやってきた、ふっくら焼きあがったほっけを食す。やっぱりウマイ!の一言。脂の乗った魚の身をほぐしながら、夢中で箸を動かす。
ここのところ、ほっけの漁獲量が減っているらしい。
そう考えると、余計に噛み締める一口一口が貴重なものに感じられてくる。

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ありがたくほっけをいただき、腹がふくれたところで、建物を出てすぐ右となりに、こんなお店に出会った。

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ゆず工房。
ガラスと雑貨のお店らしい。建物のたたずまいからして、なんともかわいらしい。

ほのぼのとした外観につられ中をのぞいてみると、これまたほのぼのするおばちゃんがカウンターの奥から迎え入れてくれた。
人のよさそうな感じが笑顔と雰囲気から伝わってくる。

店の商品もどれも素朴さがあって、店の名前のとおりに黄色い暖色系で調和がとれている。
食器や飾り物、ガラス細工がたくさん置いてあり、先に来ていた女性の二人連れの観光客がなんだか楽しそうに話している。

おばちゃんに聞くところによると、このお店、遠くは九州・四国からもたくさんの観光客が立ち寄っていくらしい。

「それでもねえ、あるときはたくさん人が来てねえ、おかしいなあとおもったらさあ、
あの歌をうたう『ゆず』っているでしょう、二人組みの。
そう、そのゆずよ。そのゆずのコンサートがあると間違えてこの店にも来られる人もいてね、うふふ」

誤解がないように言っておくが、ゆず工房さんと音楽団体のゆずさんは、特にかかわりがあるわけではない。
間違えて店内に来てしまった人も、ある人は店のファンにもなり、またある人は「ゆず」の縁かつぎとでもいうのだろうか、
気に入った商品をみやげ物として買って帰るようだ。

「ゆず」ファンもまたそうでない人も、来て良かったなと思える温かなお店だった。

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ゆず作品だけでなく、猫の小物もある。

「これは地元のクリエーターさん達が創ったものなんですよ。ぜんぶ顔が違うでしょう?」

おばちゃんがニコニコしながら教えてくれた。

「ガラス絵も手作りなのよ。世界にひとつだけよお~」

小樽はガラス細工も有名だが、トンボ玉だけでなく、ガラスに絵を描いた作品があるなんて知らなかった。
一緒に写真を撮ってくださいとお願いすると、恥ずかしがりながらも、どこか楽しそうな表情でOKしてくださった。
ころころ笑う顔が実に印象的で素敵な方だった。

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ガラス細工のお店へやってきた。大正硝子館はいくつかあって、今回お邪魔したのは、その中のとんぼ玉館。とんぼ玉アクセサリーとガラスの製作体験もできるらしい。
中に入ると、いろとりどりのガラス玉があり、うきうきした気持ちになる。カラフルなものを見るとなぜか楽しくなるのは筆者だけではないだろう。

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漁港へと足をのばし市場をみることにした。
今朝水揚げされたであろう海の幸が、ところせましと並べられている。さすが北の海の漁港。
筆者の手のひらの4倍はあろうかというタラバガ二や、色鮮やかなサクラマス、対照的に白身が目に映えるタラ。
そしてホッキやホタテ、青つぶや生牡蠣といった身の引き締まった貝たち。
ついついきょろきょろと目移りしてしまう。
なまものだけでなく、干物も豊富だ。

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「うーん」と思わずうならせる、巨大なタラバカニ。足を広げたらいったいどれほどのものになるのだろうか。

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筆者がつい買ってしまったものが、タラとばローラー。
鮭とばは有名なので知っている方は知っていらっしゃると思うが、秋鮭を半身におろして皮付きのまま縦に細く切り、海水で洗って潮風に当てて干したものだ。それのタラバージョン。
煮ても焼いてもこれほど自己主張のしない淡白な魚がいるものか、と永遠の愛情を注ぎ込むタラであるが、とばにされたものは初めて目にした。
うーん、小躍りするくらい嬉しくなってしまう。今夜の酒のつまみにしよう。

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先ほどの漁港で水揚げされたものを加工しているのだろう。かま栄(かまえい)というかまぼこやさんへやってきた。

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実はこのかま栄も目当ての1つで、それもそのはず札幌の章で触れた工務店さんの奥さんに、薦められてわざわざやってきたのだ。

おススメは定番の「ひら天」。さきほど食べたほっけを消化しきっていないが、いい香りに刺激され、どうしても食べずにはいられなかった。
最近のヒット商品のパンロールもおススメされたが、呼び込みのかわいらしい女性スタッフが試食をくださったので今日はそれでよしとした。次回は絶対食べたい。

さて、このひら天。子供の顔ほどの大きさがあり、熱々でできたてホヤホヤ。
風味豊かで口いっぱいに魚のうまみと独特の甘さがひろがる。いやはや、ごちそうさまでした。

 

あれよあれよという間に夕暮れが訪れる。
小樽と言えば、数ある歌でも聴かれるように、運河が名所となっている。

薄紫色に暮れなずむ運河のほとりを駅に向かって歩きながら、ふと気がつくと、
さらりとした風の中に、対岸のみやげ物屋から漏れ出たオルゴールの音がかすかに聞こえた。

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今回の札幌・小樽ぶらり紀行も、これでおしまい。
うわさには聞いていたけれども、この時期、5月から夏にかけて北海道はとても過ごしやすい季節でした。

木々は伸びやかに枝葉を広げ、街は花であふれ、人々は冬の鬱屈した気持ちを晴らすかのように、
おいしいものを食べたり、海や山へ家族そろってドライブに出かけたり、陶芸やガラス工芸などの趣味に没頭したり、
中でも札幌市内のおばさま方はとりわけ日本ハムファイターズの観戦に熱を入れるなど、
それぞれが思い思いの充実した毎日を楽しんでいる光景を目にしました。

北海道といえども広し!まだまだ訪れたいところはたくさんあります。

旭川、十勝、釧路、知床といった東をめぐる旅か、
グレイよろしく洋館の立ち並ぶ函館方面へ足を伸ばすか、
あるいは稚内から出ているフェリーに乗っていっそのこと礼文島までチャレンジしてみるか。

北海道ぶらり紀行は、筆者の気の向くままに、続編を描いていけたらと思うしだいです。