ハワイ島・マウナケア山頂

ハワイ島・マウナケア山の山頂は、4,205mにも及ぶ。
MAUNA KEAとは、ハワイ語で「白い山」という意味である。
ハワイと言えば、南国で穏やかな気候という印象だが、ここは別世界。
真冬の山頂では雪が降り、気温が氷点下となることも珍しくない。

マウナケア山は日本の富士山よりも高い標高でありながら、形状がなだらかで広いため、4WDであれば車で山頂まで行くことができる。
ただし、体調管理等の観点から、一般での登頂よりも、現地のツアーに参加することが推奨されている。

短時間で高い標高まで上がることは高山病の原因となるため、2,800m地点で星空観測等を行うことで、薄い大気に順応させてから山頂へ向かう。
今回の登山は満月の3日前で、月明かりは眩しく、肉眼では見えない星もあったが、望遠鏡で土星が見られたことには大変感激した。
昔、教科書で見たとおりの輪っかがくっきり見えるのだ。
また、運よく、望遠鏡に映る月を撮影させていただくことができた。
これほどじっくり星空を眺めることがこれまでになかっただけに、時間はあっという間に過ぎていく。

日の出の30分前になると、山頂への道のゲートが開く。
山頂付近には多数の天文台が所在しており、観測に支障をきたす砂埃を少しでも防ぎたいために、ゲートは30分前にならないと開かないのだ。
(天候によりゲートを開けない場合もあるそうだ。)

ゲートが開いてからは20分程度で山頂に到着する。
山頂はとても空気が薄く、10m早足しただけで、50mを疾走したかのようなの心臓の鼓動になる。
しばらく待機していると、足元に広がる雲海がオレンジ色に染められる。
この壮大な景観は、生きていることと自然のパワーを実感することができる瞬間だ。
心の迷いをさらっていくような不思議な感覚は、この体験をした者にはわかるだろう。

4,139m地点には、日本の国立天文台の大型光学赤外線望遠鏡(すばる望遠鏡)を確認することができる。
球体の望遠鏡が多い中、円柱形をしているのが特徴だ。
すばる望遠鏡は、単一鏡としては世界最大級の口径8.2mを備え、天体からの微弱な光をも集めるそうだ。
マウナケア山の標高と太平洋の中央での孤立した立地が天文学の地上観測に適した場所とされており、
すばる望遠鏡の周辺は、ケック天文台、ハワイ大学の望遠鏡など計13基の天文台群となっている。
ハワイ原住民との取り決めで、13基以上の天文台を建設しないことになっており、今後これ以上増えることはない。

山を下る途中の車窓からは、ハワイとヒマラヤでしか見られない希少な高山植物「銀剣草」が見られた。
花が咲くまでに早くて20年かかり、一度花を咲かせて種を残すと枯れてしまうそうだ。
暗闇の登り道では気づかなかった自然の奇跡を、下り道では気づくことができる。